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東日本巨大地震によって、被災された皆さんに心からお見舞い申し上げます。
亡くなられた皆さんのご冥福を、心からお祈ります。
被災地の一日も早い復旧と復興を、心よりお祈りしております。
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ともあれ、なぜ今、中学生に武道を?といぶかる人はいる。「わが国固有の伝統文化
である武道を通して、新の国際人として豊かな心とたくましさを持った青少年が一人
でも多く要請されること」に対して抵抗感のない人は多いとは思うが。
「伝統文化の武道」を「学校体育」の中でどう位置づけるのかに疑義をはさむのは、
合気道の高段者・思想家として知られる内田樹(たつる)先生。
先生の著『武道的思考』の第一章、「武道とは何か?」の冒頭「武道の必修化は必要
なのか?」が面白いので、以下、そのエッセンス。
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まずは歴史的には、「武道の禁止」はGHQが命じたものだが、学校教育において武道
の禁止を発令したのは文部省である。ここをお忘れなく!
教育行政はGHQになした約束を公的に廃棄し、武道とは、と再定義を国民に公表し
なければならない。
「武道はスポーツではない。『過去の弊害』というのはごく一時的な逸脱に過ぎず、
武道の本質にはかかわらない、武道はわが国の誇るべき、世界に類を見ない伝統文化
なのだが、私たちは戦後、敗戦国ゆえに、伝統文化を不本意にも強制されたのだ」と
ハッキリ宣言して、学校教育に導入しなければならない。「武道必修化」は、政府の
宣言がどこかであった方が筋が通っている、と思う。
日本の武道は近代において二度、決定的な「断絶」を経験する。一度目は明治維新、
二度目は敗戦。
明治維新によって戦国時代以来の伝統的な身体文化の大半は消滅。剣道が息を吹き返す
のは明治10年の西南戦争。両陣営の抜刀隊が示した高度な身体能力・殺傷技術に
よって。
以後、軍国日本において武道が重きをなしたのは、もっぱら殺傷技術としての有効性が
評価されたこと。江戸期武士の「忠」イデオロギーが天皇制イデオロギーと構造的に
親和的だったせいである。
この皇国史観によってイデオロギー的に強化された殺傷技術としての武道は、まさに
そのイデオロギー親和性の高さのゆえに、敗戦後、GHQによって徹底的に破壊される。
1945年 文部省は学校体育での武道の禁止を発令
1946年 大日本武徳会がGHQの命令で解散に。
社会体育における「武道」の名称も禁じられる。「過去の弊害を除去し、本格的
なスポーツとして、競技規則、審判規則をつくり、民主的な運営を図る」ことを
条件に「娯楽」の要素を重視することを
代償に
1950年 柔道が「競技スポーツ」として体育教材に採用に
1953年 剣道、相撲が体育教材に採用に
単に筋骨を壮健にして、勝負や技術の巧拙を競うことを楽しむ競技である、という
ことで武道は復活の許可を得た。爾来半世紀、日本の武道は「スポーツ」であり
続けた。
種族に固有の伝統文化である、という名乗りを放棄する代償として、オリンピック
種目にも登録された。国際的に認知を得たのである。
スポーツとしての「武道」は伝統的文化的要素を文部省の指導によって、ほとんど除去
することを交換条件に復活を許された。剣道が学校教育に復活した時の形態は「しない
競技」。プロテクターをつけて棒で互いを叩きあってポイントを競う、というただ
それだけのスポーツ。師もなく、読むべき伝書もない。これが公的に認知された形態
であった。
戦前の学校教育における武道では、中世以来洗練されてきた伝統的な身体文化のうち
もっとも枢要な部分が排除されていた。それは、人間の蔵する生きる知恵と力を開花
させ、潜在意識レベルでのコミュニケーション能力を開発する技法、呼吸法、瞑想法、
などの心身練磨の技法。
なぜ人間の生きる知恵と力を開発する技術の体系が、戦前の武道教育においては顧み
られなかったのか。兵士にそれは強兵の練成のためのものだったから。兵士には、
戦技は必要だが「武道」は不要のものである。君子として適切に「自己形成し、治国
兵天下の方途について熟慮し、万有共生の至理を悟ることなどは、上官も参謀本部も
大本営も誰も望んでいない。統治される側の人間には不要のもの、だったから。
中教審の体育・保健部門におられる「武道専門家」の方々は、この点についてどう
お考えなのであろうか?すべての日本人がその「生きる知恵と力を開花さえ、国民
をしてもれなく君子たらしめたい(孔子にも比すべき)という崇高な教育目標を
中教審が掲げているのだとしたら、世界に向けて誇りたい。
(『武道的思考』 内田樹(筑摩書房)p17〜27)
『武道的思考』 (筑摩書房)10/10
「いのちがけ」の事態を想定し、高度な殺傷術として洗練されてきた日本の武道。
幕末以来、武道はさまざまな歴史的淘汰にさらされ、それに耐え、そのつど「変身」
を遂げつつ生き延びてきた。
本来の意味は失われても、「心身の感知能力を高め、潜在可能性を開花させる
ための技法の体系」である武道には、今こそ見るべき叡智が満ちている。
『武道的思考』 (筑摩書房)の構成
第1章 武道とは何か?
第2章 武道家的心得
第3章 武道の心・技・体
第4章 武士のエートス
第5章 二十一世紀的海国兵談
あとがき 「武道的」ということ
内田 樹(うちだ たつる)先生のプロフィール
1950年東京生まれ。
東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院博士課程中退。
東京都立大学人文学部助手、神戸女学院大学文学部 総合文化学科助教授を経て
1996年より神戸女学院大学文学部教授(〜2011.3)。
専門はフランス現代思想、武道論、映画論など。
2007年『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)で、第六回小林秀雄賞受賞。
現在 思想家。武道家。多田塾甲南合気会師範。
【近著】(2010〜2011)
『うほほいシネクラブ』 文春新書 (文藝春秋)11/10/ 発売予定
『他者と死者〜 ラカンによるレヴィナス』 文春文庫 (文藝春秋)11/09
『レヴィナスと愛の現象学』 文春文庫 (文藝春秋)11/09
『「おじさん」的思考』 角川文庫 (角川書店)11/07
『橋本治と内田樹』 ちくま文庫 橋本治共著 ( 筑摩書房)11/07
『最終講義〜生き延びるための六講』 ART OF LIVING生きる技術!叢書
(技術評論社)11/07
『嘘みたいな本当の話〜「日本版」ナショナル・スト−リ−・プロジェクト』
高橋源一郎共著(イ−スト・プレス)11/06
『身体で考える。〜不安な時代を乗り切る知恵』成瀬雅春共著(マキノ出版)11/06
『大津波と原発』中沢新一共著(朝日新聞出版)11/05
『映画の構造分析〜ハリウッド映画で学べる現代思想』 文春文庫(文藝春秋)11/04
『増補版 街場の中国論』(ミシマ社)11/02
『ひとりでは生きられないのも芸のうち』 文春文庫(文藝春秋)11/01
『街場の大学論〜ウチダ式教育再生』 角川文庫 (角川書店)10/12
『沈む日本を愛せますか?』高橋源一共著(ロッキング・オン)10/12
『もういちど村上春樹にご用心』(アルテスパブリッシング)10/11
『身体知〜カラダをちゃんと使うと幸せがやってくる』 講談社+α文庫
三砂ちづる共著 (講談社)10/10
『武道的思考』 筑摩選書 (筑摩書房)10/10
『街場のマンガ論』(小学館)10/10
『おせっかい教育論』 鷲田清一・釈徹宗・平松邦夫共著(140B)10/10
『身体を通して時代を読む〜武術的立場』文春文庫 甲野善紀共著(文藝春秋)10/09
『街場のメディア論』 光文社新書(光文社)10/08
『現代人の祈り〜呪いと祝い』 釈徹宗共著(サンガ)10/07
『若者よ、マルクスを読もう〜20歳代の模索と情熱』石川康宏共著
(かもがわ出版)10/06
『街場のアメリカ論』 文春文庫(文藝春秋)10/05
『現代霊性論』釈徹宗共著(講談社)10/02
『邪悪なものの鎮め方』 木星叢書(バジリコ)10/01
『東京ファイティングキッズ・リタ−ン〜悪い兄たちが帰ってきた』 文春文庫
平川克美共著(文藝春秋)10/01
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