南川泰三の隠れ家日記 ブログエッセイ・「猿の手相」
「明けましておめでとうございます」
今日から二日間は完全な正月休みとなりそうだ。仕事場兼寝室からリビングに降りると娘とカミさんがテレビのバラエティ番組でコロッケのモノマネを見ながら何やらゲラゲラと笑っている。
ここでは世間と同じお正月が進行中。東北大震災の被災者たちがどんな正月を送れているのかとか、イランのミサイル発射実験は世界情勢にどのような影響を与えるのかというようなこととは全く関係なし。昨日は震度4の地震があったが、このリビングには何の不安もない。
「何がそんなに面白いのか」
と30分ほど珈琲を飲みながら、バラエティ番組に付き合う。何だか笑わないと一人だけ正月から取り残されたようなので、一緒になって笑うことにした。昔、バラエティ番組を構成していたことを思い出した。タレントの顔ぶれがすっかり変わっている。娘に
「これ誰?」と聞いたら「○○○を知らないの?すごく売れているよ」と得意げに教えてくれた。
僕はすぐに忘れてしまった。いいんだ。半年か一年もすればほとんど消えてしまうから。その頃まで人気を保っている芸人がいたら覚えればいい。
「これが幸せな家族って言うんだろうな」
僕は緊張感の欠片もない家族の笑顔を見ながら、何だか嘘っぽい幸せの瞬間を感じた。まあ、どこの家族も似たり寄ったりなんだろうな。
「今夜、風呂に入るからね」
と言ったら、娘が
「泰さん、この頃お風呂に入る回数増えたね。前は4日に1回ぐらいだったのに」
という。カミさんが横やりを入れて
「今日、入るからねと言って入らない時があるから」
娘はおおいに納得して頷いている。
バカヤロウ!そんなことあるもんか!僕は翌日出かける時と、正月は風呂に入る。年末年始は出かける用事がなかったから少々、さぼってはいたが…今夜はじっくりと入浴して一年の汗を流すことにするか。
一足先に入浴する娘がブラジャーをヒラヒラさせて
「泰さん、これ買ったの。またサイズがアップしたんだよ」
「小さくなったブラはどうするんだ?」
「捨てるに決まってんじゃない。前は私がお古をもらっていたけど、もう合わないから」 とカミさんが口を挟む。ここには原発も地震もアメリカも中国も北朝鮮もない。あるのは何だか嘘っぽい平和な風景だけだ。
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